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第5話・お隣さん。(前編)

 大きなマンションの5階、1号室に僕のお家がある。  お隣、502号室には太っているおじさんがいる。  おじさんはとても優しい。  僕がどんなに家の中を走り回っても、お隣が煩いって怒らないでくれるんだ。  そんな僕にはお父さんがいない。だからお母さんが一生懸命働いてくれている。  小学6年の僕にはまだムリだけど、もう少し大きくなったら、お母さんの代わりに働いて、うんと楽にしてあげるんだ。  だから寂しいなんて言えない。  それでもやぱっぱり家に一人は寂しくて……。  いつからだろう。  寂しいのにガマンできなくなった僕は、お隣にいる優しいおじさんのお家に遊びに行くようになった。  だからだと思う。  おじさんのお家には僕が欲しいって言った最新のゲーム機とかソフトがいっぱいあるんだ。  お誕生日とかクリスマスとか、特別な日でもないのに、おじさんは僕が欲しい物を何でも買ってくれるんだ。  優しいし何でも買ってくれるし、だから僕はおじさんが大好き! 「おじさ~ん」  学校が終わって、家に帰るなりランドセルを置いた僕はいつもと同じようにおじさんの家の前に立つ。  チャイムを鳴らせば、おじさんはニッコリ笑って僕を出迎えてくれるんだ。 「いらっしゃい、貴理也(きりや)くん、よく来たね」 「こんにちわ。えっと、今日も遊ばせてください」  頭はハゲているし、白いシャツと長いズボン。  それに腹巻き。  おじさんはハッキリ言って全然格好よくない。  おじさんは奥さんがいなくて一人身なんだって。  僕と同じで寂しいんだって。  だからおじさんと僕は一人ぼっち同盟を組んだんだ。 「今日は早かったね。宿題は終わらせたのかい?」  僕を家に入れてくれたおじさんは、にっこり笑いながら聞いてきた。  うっ。イヤなことをきかれてしまった。 「あとでするから。お願い、おねがいおねがい!!」  遊ばせて!!  ぽっこりお腹に抱きついてお願いしたら、「仕方ないなあ」って、大抵は何でも許してくれる。  自分で言うのもなんだけど、おじさんは僕に甘いんだ。  これってすごく嬉しい。僕の特等席みたいな感じ? 「貴理也くん。おじさんと新しい遊びをしないかい?」  テレビゲームをしていると、おじさんは隣に座ってそう言った。 「あたらしい、あそび?」  なんだろう。  実はちょっぴりテレビゲームが飽きてきた頃だったから、僕はコントローラーを手放しておじさんの提案に食いついた。 「マッサージごっこだよ」 「マッサージ? いいよ」  肩たたきとか足をもんだりとか、そういうのだよね。  おじさん、肩こってるのかな。  だったらそう言ってくれればいいのに。  一人ぼっち同盟なんだし、いつも優しくしてくれているからそれくらいならするよ。  僕はおじさんの後ろに立とうとしたら、おじさんは僕の後ろに回った。 「まずはおじさんがしてあげるね。気持ちが好いかい?」  おじさんが肩をもんでくれる。 「うん、でもおじさんは?」  僕は子供だ。  子供より大人が大変なのは知っている。  だから僕よりもおじさんの方がマッサージ必要だよね?  そう思って聞いてみたら――。 「おじさんは後でしてもらうから。貴理也くんが先だよ」  おじさんってばどこまでも僕を甘やかすのが好きなのかな。 「えへへ」  それはまるでおじさんにとって僕が特別みたいな言い方。  嬉しいな。  にやにやしながら目を閉じていると……。  あれ?  なんかおかしい。  ヘンだよ?  そう思ったのは、肩にあった手が、少しずつ下りてきたからだ。  はじめは肩だったのに、腕から胸になってる。  肩とか腕は僕もお母さんにしたことがあるからわかるんだけど、どうして胸もマッサージするのかわからない。  だけど胸だけじゃなくって、その下にも手はお腹におりていく……。 「じゃあ、ここは?」  おじさんが言ったとたんだった。 「っひゃっ!」  ズボンの上から、僕のものを触ったんだ。  ビックリして声を上げると、おじさんはいつもと変わらなくて、にっこり笑っている。 「ここもマッサージしようね」  おじさんの手は僕のをこねるみたいにグリグリしてくる。

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