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第8話・生け贄は蜜に溺れる(中編)
「っ、ああああああっ!!」
戒めから解き放たれた菊生は熱い迸りを勢いよく解き放つ。
身体から余分な力が抜け落ち、がっくりと項垂れた。
しかし、菊生への責めはそれで終わりではなかった。
身体を戒めていた触手は一〇本ほど絡みつき、ひと纏めになると尻孔目掛けて勢いよく挿し入った。
「あっ、っひ、やっああっ……」
後ろの孔は当然、排出する場所であって挿入される場所ではない。
貫かれた菊生は恐怖に怯える。
しかし、その恐怖も長くは続かない。
触手の数本が、菊生の肉壁にある凝りの部分に触れた。
強烈な快楽が菊生を襲う。
「っは!!」
華奢な身体が大きくしなる。
初めての責めに、菊生はもうどうしていいのかさえもわからない。
尿道を責められた菊生は果てしなく長い小水を流し出す。
「はああ、う、はああ、う……んぅう……」
(おしっこ、ずっと止まらない……)
舌を擦られ、まるでキスをされているような感覚に陥る。
菊生は乱れに乱れ続ける。
後孔を陵辱する太い触手は最奥を目指して深い抽挿を繰り返す。
菊生はさらに両足を広げられ、腰を折りたたまれた。
そうなれば、ずっと奥へ触手が伸びる。
腸まで届いてしまうほどに――。
「あっ、っぐ……」
喘ぐ口は触手に蹂躙されているおかげで閉じることさえ許されず、唾液は流れ、拝殿の中では菊生の嬌声と、そして自ら放った小水と白濁の水音が響き渡るばかりだ。
「っひぃっ」
(も、だめっ!!)
胸と尻孔。それから口内も責められ、強烈な快楽に襲われた菊生は大きく仰け反り、意識を手放した。
その日も、その次の日も――。
菊生は触手に身体を陵辱され続ける。
次第に触手から与えられる快楽に溺れていった。
最近では自ら腰を揺らし、後孔に挿入される悦に浸るようになっている。
「っひ、もうおねがっ!! 後ろにちょうだいっ!!」
菊生は欲するままに自ら触手へ手を伸ばし、貪り吸う。
そして最奥へと穿たれる太いそれを受け入れるためにうんと腰を折り、媚薬の液を体内に注がれて吐精する。
しかし、正気に返る時もある。
吐精を終え、付喪神に陵辱された後には必ずと言っていいほど、快楽に溺れる自分が惨めだとも思うようになっていた。
なんと穢らわしいことだろう。
菊生は恥辱に涙を流すことも増えていた。
「お目覚めでございますか? 菊生さま、朝食をお持ちいたしました」
いつの間にやら自分は眠っていたらしい。
巫女は音もなく座敷に入ってくると、粥を差し出した。
幾度となく吐精を繰り返す菊生の身体は鉛のように重い。
触手に求められるがまま身体を開き、腰を振って果て続ける身体には限界を感じていた。
菊生が力なく起き上がると、するりと赤い着物が落ちた。
いつ、どうやって着たのかは判らないが、情事の後、菊生の身体には必ずと言っていいほど新しい赤い着物が乗っているのだ。
もしかすると、この女が寄越よこしたものだろうか。
そうは思いながらも、しかし菊生は礼を言う気にもならなかった。
「食べたくない」
代わりにぶっきらぼうな言葉が赤い唇から飛び出る。
「主から、食すようにとのご命令でございます」
巫女が言った主とは、おそらくはあの無数の触手を持つ付喪神のことだろう。
彼女はやはり無表情のまま、粥とレンゲを菊生の膝元に置き、座敷から立ち去る。
「……」
そうは言ったものの、達した後で食べる気力さえもない。
両親には先立たれ、自分は死ぬことも許されないまま身体を穢し続けなければならない。
もしかすると抱き殺されてしまうのかもしれない。
菊生は残酷な自分の運命から逃れたくてうずくまる。
そっと静かに目を閉ざす。
寒い。
身も心も――。
剥き出しの冷たい床が身に染みる。
絶望が菊生を襲う中、突然、髪を撫でる手が現れた。
その手の動きはとても優しく、菊生を宥める。
(誰?)
両親を失ってからというもの、そのような気遣いを自分に与えてくれた者はいない。
それに、差し出されたこの手は力強い、男のものだ。
ここには男はいない。
付喪神と使い人の巫女のみ。
だからこれはきっと夢に違いない。
目を開ければ、この夢が終わってしまう。
そう思った菊生は目を閉ざしたままにした。
「かあさま、とうさま……」
目頭が熱くなる。
目尻から涙が込み上げてきた。
「っひ、ううっ……」
引き結んだ赤い唇からは嗚咽が漏れる。
菊生は手を伸ばし、頭を撫でてくれる骨張った力強いその手を取った。
するともう一方の手が伸びてきて、菊生の丸まった身体を包み込んんでくれる。
菊生は夢の中で労りを見せてくれる誰かに身を委ね、甘えた。
「どうか食してはくださいませんか、主が心配なさっています」
巫女は静かにそう言った。
心配――。
それはおそらく、『自分が死んだら生け贄をまた探さなくてはならないから』だろう。
だが、菊生にはもう生きるという意欲はなかった。
菊生は床に蹲ったまま、動かない。
(夢の中で、またあの人に会えたら……)
最近の菊生は束の間、自分を包み込んでくれる男のことばかりを考えている。
「いい加減にしないか、これだから人間は……!」
彼女は呻るようにそう言うと、口の端から鋭い牙を生やした。
彼女の姿は仮染めなのだろう。鬼のようなその姿で菊生へと間合いを詰めると、細い首に伸びてきて、握り絞めた。
その手の力は恐ろしく強い。
(息が……できない)
突然の変貌に恐怖を覚えた菊生は反応が遅れ、逃げることができなかった。
両の手が力なくだらりと垂れ下がる。
(このまま、死んでしまうのだろうか……)
呼吸ができず、このまま死に逝くのだろうと思った覚悟した矢先だった。
「何をしておる! 私は汝に命じたのは食事の配給ぞ! 下がれ」
気が遠のくその中で、菊生がここに来てから聞いたことのない、低い男の声が、薄暗い奥の部屋から聞こえた。
「ですが、主!!」
「下がれと言うておろう!!」
彼女は口答えをするも、男は威圧的に命じた。
菊生から手を放すと、すごすごと座敷を後にした。
解放された菊生は大きく咳き込み、冷たい床に頽れる。
残ったのは知らない男と菊生のみ。
(誰?)
――いや、誰かは判る。
彼女は、男のことを『主』と呼んだ。
主はこの祠の主、付喪神しかいない。
だとすると、自分はまた、あの触手に快楽を与えられるのだろうか。
菊生は恐怖を感じるものの、それでも心とは裏腹に身体が疼くのを感じた。
身体は正直だ。
菊生の両胸にある乳首はツンと尖り、太腿の間にある陰茎は膨れはじめている。
触手に抱かれ続けた結果がこれだ。
乳首は大きく膨れて赤く艶やかになり、尻孔は苦もなく太い触手を咥えられるまでになった。
ここへやって来た当初とは違って身体はずっと卑猥に変化を遂げていた。
快楽を求めていた。
そんな淫らな自分が恨めしい。
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