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〔三〕自分だけの特別な相手以外を気にかける意味などない

誘われるままにくちづければ、全身で悦びを返してくる。 緊張で力が入っていた身体が、くちびるの角度を変えていくとやわらかくなる。いつもは息継ぎが上手くできないといった初心さ出すが、今日は欲張りらしい。 自分から私に舌を絡ませてきた。 繋がっている最中に訳も分からずにする以外で、初めてかもしれない。くちづけはくちびるを合わせるだけだと思っていた、知識のない人間だ。 舌と舌を絡ませ合うのを最初のころは戸惑って、避けていた。 くちびるを放して、呼吸を乱している姿を見つめる。 もっと欲しいという顔を見ていると下半身に熱が集まっていくのが分かる。 こちらばかりが煽られるのも面白くないので、伸ばした足で腹を押す。すると足を上から押されて、位置を下にずらされた。 自分の股間を刺激するのにこちらの足を使いたいと思っているらしい。如何にも卑猥な行動だが、自覚はなさそうだ。 私と向かい合っていることに照れくささを覚えている。 性欲をひけらかしているのが恥ずかしいとは思っていない。 気にする場所がズレているのは、今に始まったことではない。 このまま望み通り、足先で性器を刺激してもいいが、直接的な刺激よりも試してみたいことがある。 朝からずっと体の支配を見えないものに奪われて、振り回されている。疲労していることにも気づかない自分への労りのなさは、感謝が不足しているからだ。 努力が足りない、自分は何も成していない、そういった意識が心に根を張って精神を痛めつけている。 側室が居れば、子供を産まなければならないという義務から解放されて楽をできると考えたが、少しも側室を歓迎していなかった。 腹を撫でる。 生命がこの中にあるとは思えない、出会ったころと同じような鍛えられていないやわらかな腹。 男とはいえ、エビータの人間なので、一般的な男が受ける剣術の訓練などを一切していない、筋肉のない体。 骨格は男の手でも荒れることのない綺麗な指先をしている。 孤児院に行かせると途端にあかぎれを起して、痛々しく変わる指先。手の温度で、外を出歩いたか分かる。それほど素直な手だ。 指の間をくすぐるように触れているとくすぐったいながらも気持ちがいいのか、小さく声が漏れる。 湯船の中にぶちまけた発汗作用があるハーブが良かったのかもしれない。頬に赤みがさして、悪くない顔になっている。 見つめていると今更、リーとライを探すように視線を動かす。 彼女たちが下がっていたことも気づいていなかった。 戸惑って揺れる瞳は事態を把握していない。 賢いようでいて、自分のことは見えていない。 何度も一緒に入浴しているのにこの後の展開に対して想像できない純粋さは犯罪だ。 自分は何も悪くないと、犯罪者が思っていそうなことを口にするのだから、始末に負えない。 勃起した性器を握らせる。 私に性欲があることを毎回驚く間抜けぶりが、嫌いではないのが困ったところだ。

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