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【7a】酷い言葉
ちんこが痛いことにして、涙を流しても許される場面だ。
けれど、アリリオさまは、そうはならない。
俺の頭をつかんで、萎えかけているちんこを顔面にこすりつける。
怒っているのか、応急処置なのか、混乱しているのか。
アリリオさまを見るのが怖い。
「どうして、弟は第二王子の言葉を信じたんだ。王族の異能は公然の秘密だとしても、あいつはそんな異能を信じてたりしなかった」
執事の言葉にうなずけない。それもそれでどうなのだろう。
第二王子とアリリオさまの弟は同じ異能だ。
俺も味わった、未来を視る力。
第二王子を信じないということは、亡くなったアリリオさまの弟の力だって信じていないことになる。自分が仕えていた相手を信じないなんて、忠臣でもなんでもない。
アリリオさまを裏切っているなら、なおさら亡くなった相手に顔向けできない気がする。恥ずかしい人だ。
「弟は、異能によって未来を知ったのだろう」
ぐっと、うめきながらなので、言い難い言葉を吐き出しているような、胸がえぐられるアリリオさまの姿だが、実際はちんこが痛くて、うめいている。
執事が鼻をすする音が聞こえる。
乳兄弟として、長い付き合いだからこそ、アリリオさまの声が乱れることがどれだけの意味を持つのか、執事も感じている。
真面目な話をしながら、俺がちんこをしゃぶり続けたせいで起きた事故だとは、決して思わないに決まってる。
痛みを誤魔化すためか、髪をかき上げる仕草をする。
うっかり見たら、目が潰れるかと思った。
眉を寄せて、物憂げな表情は、格好いいなんて単純な言葉では、おさまらない。この瞬間を絵画にして保存すべきだと芸術家に訴えたいが、見せてはくれないだろう。俺以外に見せる気がないと、平気で口にするアリリオさまだ。
「母が生きていれば、私に危害を加える未来が見えた。だから、殺したのだ」
俺のときめきを蹴り飛ばす重い真実だ。
第二王子が語ったことにアリリオさまは補足を加えて語った。
アリリオさまの弟は母親と一緒のところで、事故に遭った。
母親を守り怪我を負った弟は、無傷な自分が守った母親を殺した。
そのまま母親が生きていれば、兄に危害を加えることが分かっていたから。そうでもなければ、庇った母親を手にかけたりしないとアリリオさまは言う。
未来が視えるがゆえに残酷な選択を強いられたアリリオさまの弟に何を思えばいいのだろう。
「母の性格を思えば、私のせいにして迫害してくるのは目に見えている。兄の死も、あの人は私のせいにしていた」
胃が重くなる。アリリオさまの兄は病気で亡くなったと聞いた。
執事のうめき声は、当時を思い出しているからこその苦しみだろうか。心が痛いだろうに、ちんこまで痛めつけた俺は最低だ。
「母にとって、王族の異能を発現させた子供が正しい公爵家の子供だ。異能に振り回されて、他人に理解できない言動をしたとしても、力がある者の苦しみは、力のない私には分からないらしいからな」
後半は母親に言われた言葉だろう。
酷い言葉だ。
姉が生理で苦しんでいる時に母から「男だから楽が出来たわね」と言われたことがある。言葉にはトゲがあり、居心地が悪くなった。後日、母自身が生理で辛くて八つ当たりをしたと謝ってくれたので、いい思い出だ。
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