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【17a-1】読めない部分が多い本
さすがにリーとライに聞かせられない生々しい話なので、礼を言って、本を投げて返してもらう。
俺の指示に疑問を持たないリーはすごい。
普通の使用人なら「お持ちします」と言うところだが、指示に対して疑問を持った様子もなく従ってくれる。
これが公爵家の使用人なのだろうか。
俺からの命令に従うよう、厳しく言われているのかもしれない。
本はベッドの上に音もなく着地した。
愛と快楽は現在の俺のメインテーマと言えるものだ。
けれど、今までずっと同じことで悩んでいた。
アリリオさまとの関係を改善するために必要だから手に入れようと考え続けていた。今まで、愛と快楽はアリリオさまにとって必要なものという方向で考えていたが、大きな間違いだ。
アリリオさまではなく、誰より俺が愛と快楽を必要としている。
ちんこヒリヒリして痛いよぉとか、メソメソしたくない。
女性的な乳房はないから乳首をイジメられても我慢したが嫌だ。
痛いものは痛い。
気持ちがよくてどうにかなっちゃう系がいい。
そのために俺が主導権を握ろうと思っていたが、処女に主導権が握れるわけがない。俺は処女ではないが、本からの処女だという認定を甘んじて受け入れよう。
こんなところで、つまずいてはいられない。
本を開くと、ものすごく眠くなる箇所と読める箇所とがある。
くちづけ一覧、別冊もあるよの項目は大体読めた。
一部、読めるが理解できないものもある。
眼球舐めってなんだろう。
説明文を読むのが怖い。
眠くなっているあたりを目次で確認すると何をするプレイなのか、想像もつかないものが多い。
犬の刑とか、豚のごとく、お馬さんといっしょなどの発情期シリーズと題されているものは嫌な感じがする。
大事典をめくっていて、気づいたのは破られたページがあることだ。
もくじと合わせて確認すると位置的に公開プレイや貸し出し、寝取られNTR、モブレの項目だ。
読めない部分が多い本をもくじで位置確認できたのは、アフターケアと称された補足ページが残されていたからだ。そこは読めた。
破られたであろう前ページについての補足として、語られる内容のおかげで、どんな項目について語られていたのか察することが出来る。
妻が強姦された場合、それを防げなかった夫の股間は萎れてしまう。男としての弱さが股間をうつ向かせるなら、オスの本能を刺激するために、強姦された妻に興奮する夫に仕立てあげようという内容だった。
変わられない過去よりも、変えられる未来のために頑張るのは前向きだ。
この辺りを残しているということは、アリリオさまもエビータの未来に嫌がらせをしているわけではないのだろう。
そもそも、本を破くことなど出来るのだろうか。
アリリオさまが犯人だと感じたが、俺の手元に来た時点ですでにページがなくなっていた可能性もある。
長い歴史を誇るエビータ一族は独自の本を大量に持っているが、俺自身は本についての詳しい知識がない。
「リー、ライ、二人は本について詳しい? その、読む権利とか、本を保護している……」
言いよどむのは、この国が魔法や魔術や呪術を認めていないからだ。この世界で許される神秘は神が与えられた異能のみ。
魔道具は、勇者が由来としてセーフにしているだけで本当は他国の特産品なので便利でも使ってはならないことになっている。
「本を保護している機構はいくつもございます。そちらのご本ですと古代の術式が織り込まれているので、ページが増える仕様になっておりますね」
国宝を超えるぐらいに世界的に価値がある本だった。
ページが増える本は、普通の本じゃない。
紙ではなく生き物に分類した時代もある。
ページが増えるのだから、生きているというのだ。
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