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【20a】くだらない夢
アリリオさまの性癖は俺が思うよりも面白いことになっている。
肉は叩くと柔らかくなるというが、アリリオさまは肉自体に壁に激突して、柔らかくなっていろと指示を出す。
肉である俺が聞く気があるんだから、性癖はお互いさまだ。
俺はアリリオさまの言い分や指示を聞くと決めた。
反発して、逃げて隠れるのではなく、まずは言う通りに動いてみる。それを意識したからこそ、貞操帯の鍵を渡してくれた。
よくわからないまま決められて、妥協案も無視されるより、前進している感じがする。プレイ内容の頭のおかしさは、あの本をベッドの中まで持ち込んだ、俺にも責任がある。
ベッドにあの本があったなら、参考にしてくださいと言っているようなものだ。
なんだかんだで、アリリオさまが第三者が介入するプレイを本から破いていたことを俺は嬉しく思っている。
俺に対してアリリオさまが独占欲を持ち合わせているとは思わなかった。
俺が誰とどうなろうと知ったことではないと考えていると決めつけていた。夢の中で、息子の言葉を思い出す。
『自分が一番イヤで、一番怖いものを想像する? でもさ、それは現実じゃないよ。リオくんの頭の中にあることだ』
それはとても大切なことだ。
人の心の中を決めつけてはいけない。
相手の言葉だって、本当はそのまま受け取ってはいけないのかもしれない。心のままに言葉が吐き出されるわけではない。
本心を飲み込んできた、俺自身のことを思えば、よくわかる。
真正面から尋ねることは、大きな賭けだ。
面と向かって聞いたところで、心の内を明かす人は少ない。
尋ねる前から、アリリオさまでも、それ以外でも疑っている。
当たり障りのない言葉か、社交辞令や心にもないことを言うに決まっていると感じてしまう。
わざわざ目の前にいる相手の悪い部分を指摘するのは、アリリオさまぐらいかもしれない。
それで言うなら、アリリオさまは素直だ。言い分が唐突で訳が分からなくても、そこに嘘はないと思っていい。
「アリリオさまは、俺が、誰かにさらわれたら探してくれますか?」
「くだらない夢を見ているな。ありえない未来だ」
答えているようで、答えていない。
でも、いいように解釈するなら、俺がさらわれるような状況を作らないと言ってくれている。そう思うと嬉しい。
あの夢の中で、俺はどうして記憶を失くして息子と居たのか。
それがよく分からない。
人目を避けて、山の中に逃げ込んで、二人でだらだら、平和に暮らしていた。
掘り起こされた死体が、あの場に居た、俺なんだろうか。
誰が何のために俺の死体を掘り起こしたのか、アリリオさまは、探していた。ベラドンナは何も知らず、その後に息子も知っているようにも見えなかった。
大事な場面がザックリと大きく削られている。
自分自身の目の前のことで、頭の中はいっぱいだとお腹を撫でながら、野次馬根性は消えていない。
自分とは関係ないからこそ気になる。
俺が見ている夢は、すでに失われた可能性を内包している世界だ。
ふと、顔を上げるとアリリオさまの視線とぶつかった。
トゲトゲしていて、痛い。冷たいというより、鋭く観察されている。俺ではない何かを見ているのかもしれない。
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