3 / 10

第3話

 人は俺の顔を悪人面だと評する。  その通りなんだろう。子供と目を合わせただけで泣かれる。お年寄りには逃げられる。クラスの女子と顔を合わせると、「ひっ」と怯えられる。  つり目がちの目。無愛想な口元。極めつけは、瞳が小さい三白眼。目が合えば「睨んでいる」、普通にしているだけで「怒っている」。  それが俺、片山瑠衣(かたやまるい)の人相だ。  愛想がないのが原因かと思って、笑ってみた。そしたら、余計に引かれてしまった。「何か企んでる」とか「怖い」とか言われて。  嫌がらせで、俺の顔を使って指名手配書を作られ、学校中に貼られていたこともある。自分で見ても似合いすぎだと思った。どこの凶悪犯だよ、と。  そんな自他ともに認める悪人面の俺。あろうことかバース性がオメガだった。何かの冗談であってほしかった。  オメガと言えば、普通はちっちゃくて、華奢で、かわいいものだ。確かに俺も体自体は小柄な方だし、顔立ちもそこまで不細工というわけではないけれど。とにかくものすごく目つきが悪い。それに尽きるのだ。  診断書をもらった時、俺は死にたいと思った。こんな悪人面のオメガと(つがい)たいと思う奴が存在するはずがない。  しかし、そんな俺に転機が訪れたのだった。  榊原天音(さかきばらあまね)と出会ったせいで。

ともだちにシェアしよう!