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甘すぎオメガと超甘党なアルファ 第7話 | 入野沙織の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
甘すぎオメガと超甘党なアルファ
第7話
作者:
入野沙織
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7 / 10
第7話
向井彩人
(
むかいあやと
)
さんは、近所に住む4つ年上のお兄さんだった。子供の頃からよく遊んでもらっていた。俺が小学校を卒業するまでは、お互いの家にも頻繁に出入りしていた。 彩人さんは「優しいお兄さん」という言葉を体現したような見た目をしている。色素の薄い茶色の髪。穏やかな同色の目。ただでさえ秀麗な見た目なのに、ふんわりと笑うと頬にえくぼができて、それがすごく魅力的だ。見た目だけでなく、スポーツも勉強も何でもできた。それなのにそれを鼻にかけることなく、昔から俺にいろいろなことを教えてくれた。俺の憧れの人だった。 もちろんバース性はアルファだ。 そんな彩人さんが突然、留学を決めたのは去年のこと。俺が高校に上がった直後くらいだ。彩人さんは語学留学のため、イギリスに行くことになった。それ以来、俺は彩人さんとは会っていなかった。 ふらふらの俺は彩人さんに肩をかしてもらって、何とかアパートまでたどり着いた。 ベッドの上に倒れこむ。 「彩人さん……そこの、引き出しに薬が……」 「ここだね?」 彩人さんは俺が示した場所を探し始めるが、すぐに困ったような顔で振り返った。 「ないよ。薬」 「え? そんなはずは……」 俺は起き上がろうとした。 が、くらくらとしてベッドに突っ伏してしまった。 「寝てなきゃダメだよ」 「く、来るな!」 彩人さんが向かって来るのが恐ろしくて、俺は叫んだ。 そばに寄ってほしくない。さっきだって肩を貸してもらって歩く間、申し訳なくて仕方なかったのだ。 彩人さんは優しい。だから、俺の匂いを不快に感じていたとしても、顔に出したりはしないだろう。 でも、本当は臭いと思っているにちがいない。 運命の相手にすら拒絶された俺のフェロモン。 発情期が始まってどんどんと濃密になっていっている。俺自身は自分の匂いに鈍感だから悪臭とは思わないけれど、他の人間からすれば不快なことは間違いないのだ。今までの周囲の反応がそれを証明している。 だから、もし彩人さんにまで臭いと思われたら。 彼に拒絶されてしまったら。 怖い。怖い。怖い。 俺が発情期を迎えてから、彩人さんに会うのはこれが初めてだ。 いつも俺に優しくほほ笑んでくれた彩人さん。 彩人さんにだけは拒絶されたくない――。 彩人さんが俺に近づいてくるのが、怖くてたまらない。 「発情期が来てるんだね。ルイくん、君の番は……」 「番なんて、いない」 「え? だけど、君のお母さんから聞いて――」 「うるさい! うるさい! 早くここから出ていってくれ!」 彼が近づいてくると、アルファの匂いがふわりと漂って来て、それで体がどうしようもなく熱くなる。 彩人さんがベッドに乗り上げて来た。ぎいっ、ときしむ音が聞こえて、それが俺の焦燥感を駆り立てる。 「ルイくん……すっごく、いい匂いがする」 「そんな気休めなんていらない……! 臭いんだろ?」 「臭い? そんなわけないよ。こんなに甘くて、いい匂いなのに」 彩人さんがどんな表情を浮かべているのか、怖くて確かめられない。 俺は俯いて、彼を視界に入れないようにする。 しかし、彩人さんはどんどんと距離をつめてくる。その手が俺の横髪をさらりと撫でた。 「ひっ……や、やめろ……!」 「ごめん……やめられない」 彩人さんの顔が近づいてきて、頬同士が触れ合いそうなほどになった。首筋の匂いをかがれて、キスを落とされる。俺は喉奥から「ひっ」と声を出す。 「ルイくんの汗、すごく甘い。俺の好きな味だ」 「や、やだ……やめろ……やめてくれ」 俺は駄々っ子のようにいやいやをする。 「俺は臭いし、体液だって……吐き気がするくらいひどい味だって……」 「誰が、そんなこと言ったの? ルイくん、すごく甘い匂いがする。汗も甘い。すごく美味しそうだ」 「……甘すぎるから、気持ち悪いって……」 「それなら平気だよ。俺、超甘党なんだ」 「え……?」 思いもよらない言葉に、俺は顔を上げてしまった。
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入野沙織
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