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第8話
2人で歩く帰り道、
「ぷっくく……!」
たまらずと言った様子でレティが噴き出した。そして、腹を抱えて笑い出す。
そんな彼女からは、先ほどまでのおとなしそうな雰囲気が消し飛んでいる。
「あはは! あんたが帰るって言った時のあいつの顔、見た? もうおもしろいったらないんだから!」
「ね、姉さん……」
大笑いしているレティとは対照的に、ユティスは顔を青くしていた。
「あんなことしたら、レオン怒るよ……!」
「そりゃもう、怒ってるでしょうね」
「そんな……」
「でも、それ以上に悶絶してる。据え膳食べ損ねたんだから、当然ね」
「そうかな……レオンはモテるから、そういうことしたくなったら、相手にはいくらでも困らないと思うけど……」
「わかってないわね。今日はステーキを食べるぞ! って気分の日に、魚料理を出されても食指は動かないでしょうが」
「う、うん……?」
「まー、どっちにしろ、答えは明日わかるわよ」
「本当に……大丈夫かな」
ユティスは気が気でなくて、顔を俯かせる。
その額を勢いよくレティが弾いた。
「任せなさいな。あんた、このあたしを誰だと思ってんの?」
ユティスは額を抑えて、息を呑んだ。
コートのポケットに両手を入れて、さっそうと歩く姉。これほどたのもしく格好よく見えたことはない。もう少しだけ姉の言う通りにやってみよう。ユティスはそう心に決めるのだった。
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