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初耳7
「はい。比嘉響です」
「俺は風紀で3年の相良大志(さがらたいし)だ」
「よろしくお願いします」
頭を下げると、「夕飯行くぞ」と立ち上がった。
桃香先輩もゆっくりと立ち上がった。
桃香先輩も相良先輩もまだ制服を着ている。
「あ、制服じゃないとダメですか?」
着て来た私服を見直す。いくら寮でも、外出は制服の決まりでもあるのかもしれないと気が付いた。
「いや、授業以外は私服で構わない。今日はそのまま来たから制服なだけだ」
授業からそのままここに来たという事なのだろう、相良先輩は先に歩き出した。
寮の食堂には事前に俺の紹介をすると伝えてあったのだろう、中に入ると一斉に注目された。入ってすぐの少し開けたところに桃香先輩、相良先輩と並んで立つと、「事前に告知してあったが、今日付けで編入することになった2年の比嘉響だ。桃香としばらく同室になる」と相良先輩が紹介した。一歩前に出て、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
相良先輩は、「以上だ。食事を再開してくれ」と片手を上げて合図した。
食欲旺盛な高校生。俺の事より、食事を待たされたことの方が重要だったのだろう、すぐに席を立ちあがり、食事が提供されるらしいカウンターへと殺到していた。
「響君。僕は同じ2年の三上春(みかみしゅん)。寮長会の経理だからよろしくね」
親しげに話しかけてきた春はフワフワした茶色い髪と大きな瞳が印象的な童顔な生徒だった。
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