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初耳10

 あの声がきっかけだけど、どうしても桃香先輩をもっと知りたいと思った。  あの綺麗な容姿と相反する声。それがどうしても俺を引き付けた。 「梓先輩には普通に話してるよ。同室で仲良くなったら話してくれるんじゃないかな?」 「梓先輩?」 知らない名前に首を傾げた。来たばかりで、知らない人ばかりだ。桃香先輩が普通にしゃべる相手がいることに少しだけ胸が痛んだ。 「桃香先輩の従兄弟で、ここの副寮長だったの」 何で過去形なんだろう。先輩と言う事は卒業生なのだろうか。 今は副寮長がいないことは用務員の柴田に聞いて知っていたが、いたというのは知らなかった。 「梓先輩は今はA寮の副寮長だから」 「A寮は副寮長がいるんだ」 「今いないのはこのB寮だけだよ。ずっと桃香先輩が寮長で副寮長は梓先輩がしていたから」 「今年は何でしてないんだ?」 「寮長会のメンバーは同じ寮から選ばれるんだけど、副寮長は全生徒から選ばれるんだ。寮長の権限で。気が合わないとやって行けないからね」 幼馴染や従兄弟など仲がいい生徒が他の寮にいる場合もあるから寮長の相棒として副寮長は全生徒から選べるらしい。 それなのに、梓先輩を選べなくて誰も指名しないなんて、よっぽど梓先輩が有能なのか……恋人なのか。 「任期は夏休み明けからだから副寮長指名は夏休み明けの実力テストの成績順だったんだ。それでA寮が上だったからA寮の園田寮長が一位指名で梓先輩を取ったんだよ。僕たちのB寮は『見送り』にしたからまだ決まってない」 成績順で決まるものは他にもあるらしく、寮同士の競い合いが生徒の向上心にも繋がっているということらしい。

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