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初耳11

「寮同士仲良くすれば良いのに」 「まあ、伝統だからね」 春は苦笑いでデザートのプリンを口に運んだ。 「俺、甘いの苦手なんだよね」 そう言ってトレーの上のプリンを春のトレーに移動させた。春は笑顔でそれを受け取った。 「副会長いつ決まるんだよ」 副寮長が決まれば俺は同室から開放されて希望通りの個室に移動できる。 「次の試験で互いの平均点で10点以上を取れば覆すことができるんだ。覆して、梓先輩を副寮長に指名するんだよ」 「平均点10ってギリじゃん」 今の平均点が何点なのかは知らないけど、80点以上だとその上を取るのはなかなか難しい。 「だから必死なの。補習が必要な生徒は放課後談話室で上級生からマンツーマンで勉強会だから」 「俺は? 俺、何も聞いてないけど」 補習が必要とか全く聞いてない。勉強は前の学校でも上位ではあったけどここの授業のレベルがどれ程なのかは分からない。さっき教科書を見たけど、内容はほとんど変わらないが、今、どこをやっているのかはまだ分からない。 「響君はここに編入できるくらいだから必要ないんじゃない? 分からないところは桃香先輩に聞けば良いよ。負け知らずだから」 「負け知らず?」 「ずっと学年トップってこと。桃香先輩だけなら負け知らずなの」  桃香先輩が首位を独占していても、ほかの生徒の成績が低ければ平均点は下がってしまう。必然的に底上げが必要なのだ。 「喋ってくれないのに教えてくれるか分かんない」 話しかけても返事すらしなかったのに……。 「その梓先輩ってのは?」

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