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初耳13

「それって何、男同士だけど付き合ってるとかってこと? 恋人同士?」 ここが男子校だから有り得なくは無いだろう。 別に偏見とかはない。 それに、見惚れるほどの容姿を持っているのだから納得だ。 「うーん。違うとは思うけど、幼馴染で従兄弟らしいから仲はいいよ。それに梓先輩だし。面倒見がいいから」 梓先輩には会ったことが無いから分からないけど、成績がよくて面倒見がいいらしいことだけは分かった。そして、桃香先輩が固執するほどだってことも。 来たばかりの俺はまだ知らないけど、何だろう、どうしてか見たこともない相手を知れば知るほど、もやもやと胸やけを起こしていた。 「桃香先輩を……相良先輩が言うには『甘やかしてた』らしいから」 「甘やかす?」 「精神的な話だけど、喋らない桃香先輩のことを甲斐甲斐しく面倒見ていたのも梓先輩だし、橋渡しも梓先輩がしていたから」 そういう甘やかせ方か。だからこれまで喋らなくても桃香先輩はやっていけてたんだと理解した。 その橋渡し的な存在の梓先輩を取られてしまうと、B寮は崩壊してしまう。A寮の寮長の園田先輩ってのはそこを突いてきたということだ。桃香先輩が寮を仕切れなくさせて、寮同士の競い合いを優位にさせるために。 「もうさ、桃香先輩に喋ってもらったらいいじゃん」 呆れてしまう。高校3年にもなって自分のわがままで喋らないとか……。 自分でしゃべれば、その梓先輩も必要なくなる。 「それができたら困ってないから」 「みんな困ってんじゃん。俺が喋らせてやる」 立ち上がって拳を握ると、「無理だと思うよ」と春は苦笑いしていた。

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