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難題1

「おはようございますっ。おはようございますっ桃香先輩っ」 「…………」 翌朝。俺は部屋から出るとすでにソファーに座っていた桃香先輩に挨拶をした。 名前まで呼んで呼びかけたのに、桃香先輩は眉間に皺を寄せて一瞥しただけで返事はしなかった。 「桃香先輩、朝ごはんは? 朝ごはんは食べたんですか?」 ソファーに寄るとテーブルの上に置かれたマグカップからはコーヒーの香りが漂っていた。 テーブルの上には書類が重ねられていて、手にも書類を持っている。反対の手に持っていた赤ペンで書類をポンポンっと叩いた後でカップを指した。 忙しいからコーヒーで済ませるということだろうか。 「朝食食べないんですか?」  コーヒーなんかで済ませるより、しっかり食べた方がいいに決まっている。 「一緒に行きませんか?」  俺が誘っても桃香先輩は眉間に皺を寄せたままため息をこぼすだけで、返事をしない。 ガチャンと音がして、「桃香、起きてるか?」と相良先輩の声がした。 「おはようございます」 俺が挨拶をすると、相良先輩も挨拶を返して、「今から寮長会だからゆっくり食べて来い」と手を振られた。 仕方なく1人で部屋を出ると、春の部屋からネクタイを結びながら春が飛び出して来た。 「あ、響君おはようっ。行ってきます」と走って行った。

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