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難題5
外では普通なのか。
「でも、梓先輩としか出かけないから」
また梓先輩。
まだ会ったことの無い梓先輩。
どんな人なのか気になる。
どうして2人の仲が気になるのかを知りたい。あの声がもう一度聞きたい。普通に話をして、俺の名前を呼んで欲しい。こんなに人に固執したことなんてない。声が聞けないからかもしれないけど、それ以上に、もっと親しくなりたいと望んでしまう。もしも、笑って名前を呼んでくれたら。
「そんなに桃香先輩に必死にならなくても、このテストが終わったら響君引越しだから」
平均点を10点上げるのは容易じゃない。だけど、マンツーマンによる指導は徐々に効果を上げているようで、寮内での簡易テストも点数はだいぶん上がっていた。
来週に行われる中間テストも確実だろうと寮長会では話している。
「そうだけどさ、気になるんだから仕方ないだろう」
ゾワゾワとした感覚がなになのか、どうして桃香先輩にこだわるのか。
未だに結べないネクタイを結んでくれる。
「気になるって?」
「気になるって言うか、放って置けないって言うかさ」
喋ったらきっともっと人気が出るに違いない。
もっと魅力的に違いない。
「まあ、桃香先輩人気あるからね。響君が憧れても無理はないよ」
憧れとは違う。
引き付けられてやまない。憧れは見ているだけ十分だ。名前を呼ばれたいとは思わないだろう。
「憧れなら……触りたいとは思わないよ」
その心に触れたとは思わない。
心を開いて欲しいとは思わない。
俺の方を向けたいとは思わないはずだ。
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