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自覚と嫉妬

数学教諭の叔父の後藤正嗣(ごとうまさつぐ)とは週末にようやく会うことができた。 普段は度々家に遊びに来ていたのに、いざ、俺の方から会おうとすると会えなかった。 特別教室棟にある第2数学準備室。 書類や本が山と積まれた机の横に置かれたソファーに座って、インスタントのコーヒーを飲みながら、「学校に馴れたか?」なんて普通の会話を交わす。 来週末からはいよいよ問題の中間テストが始まる。寮では毎日夕食後に談話室で上級生による補習授業が行われていて、俺もたまに顔を出していた。 「この調子だと平均点10以上は難しい気がするな」 「何? 平均点ってそんなに高いの?」  寮長会のメンバー内では大丈夫だろうと言っていたのに。 「全学年の平均点だからな。A寮の前回の平均点は85.7。B寮が84.5。A寮も黙って抜かれるわけはないから、B寮は平均点を最低でも12点は上げる必要がある。全寮生の平均点だからな、かなり難しいな」 得意教科で点数をかせいでも苦手教科が上がらなければ平均点を上げるのは難しい。 「寮生のヤル気しだいだけどな」 叔父さんはため息を付きながら、「すでにB寮は歪が生まれてきているしな」と呟いた。 「ひずみ?」 「そうまでして梓先輩を取り戻さなくても、桃香先輩がいるから大丈夫っていう『歪』」 「どういう意味だよ」 「梓君が桃香君の通訳をしなければ桃香君が喋ってくれるんじゃないかって期待。B寮でやってる勉強会も徐々に苦情が上がってきている」

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