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自覚と嫉妬

 そうだろう、勉強が好きな生徒は少ない。梓先輩を副寮長に戻さなくても、桃香先輩が話せば問題は解決する。歪が生まれない方がおかしい。 無理やり勉強会をするよりも桃香先輩さえ喋ってくれたら楽だから。 「そうしてまで桃香先輩喋りたくないんだ」 「まあ、そうだろうね」 「変なの」 ボスッとソファーに背中を預けた。 「まあ、A寮に取られたっていうのが桃香君は悔しいみたいだけど」  自分と長年連れ添った副寮長があっさりと取られてしまえば、悔しいだろう。恋人と間違われるほどに仲ならなおさら。 編入して来たばかりで内情に詳しくない俺はそれがどういうことなのか理解できない。 「まあ、園田君の素行を知ったら桃香君の怒りも理解できるんじゃないかな?」 「園田って、A寮の寮長の?」  素行を知れば桃香先輩の怒りが理解できるとはどういうことだろうか。恋敵とでもいうんだろうか。園田先輩も俺は見たことが無い。 「そうそう。彼もモテるからね~」 寮長になるくらいだから生徒からの信頼も人気もあるのだろう。桃香先輩よりも人気があるのかもしれない。 人気も抜かれて、寮対決でも抜かれて、ずっと一緒にやって来た相手まで取られたら腹も立つのかもしれない。 「素行って何?」 しれっと恐ろしいことを言う。暴力を振るうような不良という意味じゃないくらい俺にも分かる。間違ってもここは共学じゃない。 もてるって……。 「人気は桃香君と変わらないよ。園田君はワイルド系かなぁ」  叔父さんは意味ありげに含みを持たせる言い方をする。

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