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自覚と嫉妬
「…………」
「あれ? 響は偏見あるんだ」
持てるというのが、同性からであることを明らかにされるが、別に驚くことのほどでもない。
「偏見は無いよ。自分に降りかからなければ構わない」
これまでだって、男に言い寄られたことはある。可愛い系ではないが、美人な母親に似ている自覚もある。この容姿を憎んだことは無いけど、ここが男子校でそういう恋愛も有りだと分かっている。
「そっか。まあ、響も美人だし、気をつけることに越した事はないよ」
「気をつけなきゃならないのかよ」
「血気盛んな男子校だからね」
「怖いっての。脅すなよ」
いくら俺でも不意を突かれたり、多人数で襲われたら抵抗できないかもしれない。今はまだ大丈夫だけど、慣れてくるとどんなことが起こるか分からない。
「今は桃香君と一緒だからいいけど、一人部屋になったら鍵は絶対になくさない方が身のためだよ」
「分かった」
身震いしながら鍵である学生証を握り締めた。
『ルルルルル……』
内線の電話が鳴り出して、叔父さんが慌てて電話に出た。
しばらく話していたが、誰かがここへ来ることがその内容から分かった。
「ごめんね、響君。これ、持っていっていいから」
コーヒーと一緒に出されたプリン。有名な洋菓子店の限定商品らしいけど、俺は甘いものは苦手。
それも2個も渡されてしまった。
「俺が甘いの苦手なの知ってるだろう?」
度々家に来るから、俺の好みも熟知しているはずだ。プリンなんてここ数年口にしていない。
「同室の子と仲良くなりたいんだろう?」
「何? 桃香先輩甘いもの好きなの?」
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