23 / 121

自覚と嫉妬

「…………」 「あれ? 響は偏見あるんだ」  持てるというのが、同性からであることを明らかにされるが、別に驚くことのほどでもない。 「偏見は無いよ。自分に降りかからなければ構わない」  これまでだって、男に言い寄られたことはある。可愛い系ではないが、美人な母親に似ている自覚もある。この容姿を憎んだことは無いけど、ここが男子校でそういう恋愛も有りだと分かっている。 「そっか。まあ、響も美人だし、気をつけることに越した事はないよ」 「気をつけなきゃならないのかよ」 「血気盛んな男子校だからね」 「怖いっての。脅すなよ」  いくら俺でも不意を突かれたり、多人数で襲われたら抵抗できないかもしれない。今はまだ大丈夫だけど、慣れてくるとどんなことが起こるか分からない。 「今は桃香君と一緒だからいいけど、一人部屋になったら鍵は絶対になくさない方が身のためだよ」 「分かった」 身震いしながら鍵である学生証を握り締めた。 『ルルルルル……』 内線の電話が鳴り出して、叔父さんが慌てて電話に出た。 しばらく話していたが、誰かがここへ来ることがその内容から分かった。 「ごめんね、響君。これ、持っていっていいから」 コーヒーと一緒に出されたプリン。有名な洋菓子店の限定商品らしいけど、俺は甘いものは苦手。 それも2個も渡されてしまった。 「俺が甘いの苦手なの知ってるだろう?」  度々家に来るから、俺の好みも熟知しているはずだ。プリンなんてここ数年口にしていない。 「同室の子と仲良くなりたいんだろう?」 「何? 桃香先輩甘いもの好きなの?」

ともだちにシェアしよう!