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自覚と嫉妬

叔父さんは得意げに笑って、「またおいで」と手を振った。 俺はプリンを袋に入れてもらって第二数学準備室を後にした。 いや、1階降りたからここは1階のはずなのに、なんで下に降りる階段があるんだろう。間違っても地下は無い。 あの先は教室棟に繋がっていたはず……。 あれ? トイレはさっき通り過ぎた。 迷った。 広い上に建て増しで複雑な形の校舎。斜面に建っている事もあってさっきまで2階が、降りても2階ということもある。 方向音痴ではないとは思うんだけど……。 やばい。このままだと夕飯に間に合わなくなる。 休日の夕食は5時から7時までだ。 すでに5時は過ぎている。 手にはプリンしか持っていない。甘いもの苦手なのに、これが夕飯になったらどうしよう。 「窓から出ようにもここ2階だしな……開けっ放しにするわけにもいかないし」 窓の外を見ると眩しい夕焼け。 休日で校内に人影は無い。叔父さんのところにも戻り方が分からない。窓の先には寮が見えているというに、たどり着く方法が分からない。 とぼとぼと歩いていると、ふっと、声が聞こえた。 どこ? キョロキョロしながら耳を澄ませて、声のするほうへ進んでいく。時々しか聞こえなくて、すぐに見失いそうになる。 すぐそこだと思うのに、俺の足音が聞こえたのか、声は止まった。 『科学準備室』 見上げたプレートにはそう書かれている。 隣の科学室のドアに手をかけるとすっと開いた。中を覗いても誰もいない。声のした化学準備室に繋がる黒板横のドア。そこに近づいて、一枚だけある小さなガラス窓を覗き込んだ。

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