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自覚と嫉妬
春は外では普通に話をするって言ったけど、学校の外では誰かに恋をしたり、身体の関係を持ったりしてるってことだろうか。
そう思うと、高鳴った胸がまた、もやもやと胸やけを起こした。
俺は気が付かれないようにそっと、科学室から抜け出した。
『ガタンッ』
準備室から激しい音がして、足を止めた。中から言い合う声が聞こえる。
さっきと事情が変わったようで、俺は「誰かいませんか~?」と中に聞こえるように声をかけた。
情事が終わったのか、それとも無理矢理だったのか。俺の声に言い合いは止まったから、中には聞こえている。
「すいませーん。迷ってしまって……」
「何だよっ」
急に開いたドアから現われた男は眉間に皺を寄せて開けたドアに手を当てたまま俺を見下ろした。中が見えないようにしているのは、もう一人誰かがいるからだろう。
「す、すいません。校内で迷って……寮に帰れなくて……」
「ああっ?」
益々表情は険しくなる。
「ごめんなさい」
何が悪いというわけではないけど、思わず謝る。
白いワイシャツは全開で下のジーパンもベルトが開いた状態になっている。
明らかな情事の様子にこっちが赤くなってしまう。
眉間に皺を寄せて不機嫌な顔はしているけど、桃香先輩とはまた種類の違うイケメンだ。長身のイケメンが凄むと怖いと身をもって知った。
「何謝ってんだよ。ったく。迷っただぁ?」
不機嫌な男は語尾を上げて、俺を上から下まで観察するように見た。その様子に不快感を覚えたが、このままだと寮に帰れなくなりそうなので、仕方なく男に尋ねることにした。
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