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自覚と嫉妬

「すいません。まだ編入したばっかりで……寮までの道を教えてもらえたら帰れると思うので……」 「編入? お前、比嘉か?」  男はハッとしたように表情を変えた。今度は物珍しそうに俺を見る。 「はい。比嘉、響です」 「えっ? 編入生の比嘉響君?」  男の後ろから違う声がした。 「わっお前、何、出てきてんだよっ」 先に出てきた男を押しのけるようにして、赤茶色の髪の男が顔を出した。 赤茶色の髪の前髪をかき上げる様にして顔を見せる。 「だって、僕も比嘉君見たいっ」 準備室から廊下に出てきて、シャツに手を通しながら、赤茶色の髪の生徒は「僕、僕行く」と俺の腕を引いた。 「ちょっ、梓っ」 「比嘉君。行こう」 ニコニコ笑って、俺の肩を抱くようにして歩き出した。 梓って言わなかった? え? この人が梓先輩? 前が全開になったままの生成りのシャツの下には派手な柄のTシャツ。だけど、その鎖骨に見えたのは明らかに付けたばかりの赤い鬱血。肩に手を回されているから、それははっきりと見ることができた。 「梓っ」 「またな~」 笑いながら、「急いで」と俺の腕を引いて走り出す。 後ろから足音はしないからさっきの生徒は追いかけてはいないのだろう。特別教室を抜けて外に出ると、ようやく歩き出した。 「あの、梓先輩ですか?」

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