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自覚と嫉妬

「違いますよ。回りが梓先輩と桃香先輩は仲がいいって言っていたから、そうなのかと思っただけです」  勘ぐったわけじゃない。正しい答えが欲しかったのだ。この胸のむかつきを知るために。俺が抱いている胸のむかつきが、梓先輩と桃香先輩の仲を知ることで解消できるなら、真実を知りたいと思ったから。  俺は桃香先輩が気になって聞いたわけじゃない。梓先輩と園田先輩との関係を知りたいだけだ。  梓先輩の本当の心が知りたい。  含みを持たせて、はっきりと言わない理由が知りたいだけだ。 「仲はいいけど和臣とは違うから。付き合ってるとか、園田と三角関係とか言われているけど、全く関係ないから」  噂は噂。本人たちの口から語られることこそが真実だ。 「じゃあ、園田先輩と恋人同士になりたいってことですか?」 「響ちゃん。可愛いね。それは内緒だよ」 『響ちゃん』と甘い声で呼ばれてどきりとした。無駄に色気を振りまかないで欲しい。 桃香先輩とどことなく似ているからだろうか、甘く呼ばれてドキリと胸が高鳴った。 「でも、桃香先輩は次のテストで副寮長になってもらうって躍起になってますよ」  梓先輩は違っても、桃香先輩は梓先輩を想っているかもしれない。  こちらの疑いが晴れても、元の疑いが晴れたわけじゃない。  桃香先輩は誰を想っているのか。 「それは和臣じゃなくて、寮生でしょう。俺、ちゃんと和臣に話したんだけどな。本当、和臣は子どもなんだから」  まるで愛おしむかのように笑う。本当に仲がいいということが実感できる。恋人ではないというけど、仲を疑わざるを得ない様子だ。

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