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自覚と嫉妬
急な行動にどうしたのだろうかとくびをかしげる。
その指先を視線で追うと梓先輩は自分の鼻を指差した。
何のサインだろうかと指さされた鼻を見つめる。足音が近づいてきて、梓先輩の肩に手が置かれると同時に梓先輩が後ろへと引き倒された。
「見つかった」
にっと笑って梓先輩はその胸に背中を預ける。
「僕は道案内をしただけだよ。和臣」
背中から抱き支えるようにして梓先輩を抱き締めているのは桃香先輩だった。
「ねえ? 響ちゃん」
答えを促して首を傾げる。
色気のある声で仲を見せつける。
やっぱり、そういう仲なんじゃないかと疑ってしまう。
梓先輩は桃香先輩とは違うと、言ったけどやっぱり仲がいいことを見せつけられると、胸は苦しかった。
俺は、桃香先輩をどう思っているのだろう。
桃香先輩は俺を睨みつける。俺は何も悪いことをしていないのに何で睨まれるのか理由が分からないけど、突き放されたようで胸が痛んだ。
「叔父さんの……後藤先生のところから寮に帰れなくなって……寮まで案内してもらいました」
梓先輩に促されて訳を話した。
「ほら、間違ってないだろう」
梓先輩は桃香先輩を押しのけるようにして立ち上がると、「じゃあ、僕は帰るから」と手を振った。
それを桃香先輩が追いかけて行く。
再び引き寄せた背中に引っ付くようにして梓先輩の耳元で何か話している。
その声は聞こえない。
その声は俺には聞かせてもらえない。
その声を俺も聞きたい。
梓先輩は笑って答えながらこっちに振り返って、「響ちゃん。またね」と桃香先輩を連れて行ってしまった。
俺はその2人を見送りながらなぜか苦しくなる思いを抱えて目の前の寮に駆け込んだ。
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