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奪われる想い

2人を見送って寮に帰ると、「響君っ」と春が驚いた顔で飛び出して来た。 「何? どうした?」 「ど、どうしたって、こっちが聞きたいよ。いつまで経っても帰ってこないから何かあったんじゃないかって心配してたんだよ」  春は本気で心配してくれていたようで、顔色が悪かった。 「あ、え? そうなんだ。大丈夫だよ。ちょっと校内で迷子になったけど梓先輩に送ってもらったから」 「梓先輩に?」 春の後ろには相良先輩がいた。先輩も俺を探してくれていたようで、俺を観てホッとした様子だった。 「相良先輩も心配してくれたんですか? すいません。大丈夫です」 そう言うと、「飯に行くぞ」と食堂に向かって行った。 残った春と一緒にその後ろを追いかけて食堂に向かう。 「桃香先輩が響君が帰ってこないって言いに来てみんなで心配してたんだ」 「桃香先輩が?」 俺を心配して探してくれたってことだろうか。その声で俺を呼んだのだろうか。 俺には声をかけてもくれないのに。 梓先輩には抱きついて話をしていたのに。 収まった胸のむかつきが再び再発する。 「うん。相良先輩に帰ってこないけど、僕のところに来てないかって聞きに来たって」  直接、呼びかけたってことではないらしい。 「そうなんだ。桃香先輩とはさっき寮の前で会って梓先輩と出て行ったよ」

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