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感情
春はこのテストが終わって部屋が変われば周りからの視線なんて収まるなんて言ってたけど……。
梓先輩はここに帰ってくる気は無いと言ってた。もし、帰ってこなかったら俺の部屋替えは無いかもしれない。
無かったらこの生活が続くわけで……。
桃香先輩と一緒にいられるのはいいけど、周りから監視されているような生活は嫌だ。
一緒にいたからといって会話があるわけでも無いし、楽しいわけでもない。同室というだけで、嫉妬と羨望の眼差しにさらされて、聞き耳を立てられ、観察される。
俺だって、開放されるなら喋ってほしい。だけど、願いながらじっと出方を見ているだけなのだから、どちらかといえば息が詰まる。
つい、喋ってよなんて甘えてしまった。
自分で何とかすると梓先輩には言ったくせに。
梓先輩とは喋るのに……そりゃあの2人は従兄弟でずっと一緒に生活していたんだから仕方が無いけど……俺も喋りたい。
あの声を聞きたい。
このまま俺がここにいたら喋ってくれるだろうか。
平均点を10点上げることが出来なかったら俺はここにいられる。
今は梓先輩がA寮で離れているから、接点は少ない。俺がここにい続けたら、俺と喋ってくれるようになるかもしれない。
梓先輩より……。
この感情は何だろう。
黒い感情が支配して、胸を苦しくさせる。
俺の中の桃香先輩に対する黒い感情。
俺はこんなにも人を落とし入れる感情を持っていただろうか。
俺はこんなにも醜い人間だっただろうか。
ソファーの上で膝を抱くように背中を丸めた。
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