47 / 121

奪回

「顔は目立つからやめとけよ」 何度も何度も蹴り上げられる。 痛みに涙が滲んで、床に顔をこすり付ける。4人から暴行に、どこから殴られているのかも、蹴られているのかも分からず、抵抗も皆無で意識は朦朧としてくる。 「もういいだろ」 暴行が止まる。 「白紙回答と交換だからな」 薄れる意識、かすむ視界。 俺は暴行が止んだことに安堵して……4人が立ち去る足音を聞いていた。 「……がっ……比嘉っ……」 「んっ」 止めて。もう止めてくれ……。 振り上げた手はまだ縛られたままで、口も縛られたまま声が出せない。恐怖に目を閉じたまま抵抗する。 「桃香、先にほどいてやれ」 違う声が離れたところから聞こえた。 「比嘉っ、大丈夫か?」 その声にゆっくりと目を開けた。視界を覆うほどに近い距離とその声に抵抗は収まり、安堵した。 冷え切った身体に当るところは熱いくらいだ。 抱き締めるように俺を起こし、顔を覗き込んでいる。 「大丈夫か?」 ハスキーで低く聞き取りにくい声。 その声が俺の耳を擽る。 近い距離でじっと俺を見つめる。その表情は険しく、心配に揺れている。 「桃香、まずは落ち着け」 バサリと俺の体の上に何かが掛けられた。そして頬に当る鋭く冷たいもの。

ともだちにシェアしよう!