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奪回
『ジャキッ』と音がして俺の口は自由になり、続いて腕も自由になった。
「比嘉……」
ギュッと抱き締められて痛みに呻くと、「離してやれ」と引き離された。
「ったく。立てるか?」
跪いて俺に話しかけたのは相良先輩。その後ろには春がいる。
俺を抱き起こしているのは桃香先輩だ。
「大丈夫か?」
ハスキーな声で聞かれて首を横に振った。
「痛い……」
身体中が痛いし、寒い。カタカタと寒さに震えが走り、痛みもあって言葉が出ない。
大丈夫とか、ありがとうとか、言いたいことはたくさんあるのに、助かったことに安堵して、言葉が出ない。
それに、寒さに震える唇はうまく言葉を発することができない。
「相良、毛布」
「春、行くぞ」
桃香先輩に頷いてから相良先輩が春を促して教室を出て行く。
そのドアが締まる音と同時にもう一度その腕の中に抱き締められた。
温もりが伝わってくる。俺の肩に顎を乗せるように抱き付かれて、その頬を熱く感じる。
ギュッと力強く抱き締めてから離すと桃香先輩の制服は俺にかけられた物がべったりと付いていた。
「汚れますよ」
言いながら床に座りなおして、身体にかけられたジャケットを引き上げた。
教室の電気が付けられていて素っ裸でてらてらと艶かしく光る液体があまりに卑猥で恥ずかしさに俯いた。
それにあちこち蹴られたところが赤く色着いていた。
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