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奪回

肩からすっぽりと毛布をかぶって前をかき合わせると立ち上がるために床に手を付いた。床にはまだ液体がこぼれていて、安易に手を突くと滑ってしまう。 桃香先輩は教室の入口に立って俺が付いてくるのを待っている。 「……ってぇ……ちょっと……無理」  何度か立ち上がろうと試みたが、右足首に激痛が走って立ち上がれそうにない。それにあちこち痛くて立ち上がるために力を入れるとそこから痛みが走った。 相良先輩は俺を毛布ごと抱き上げた。 「うわっ、……ちょっ……やめて」  お姫様抱っこさながらに横抱きに抱き上げられて、恥ずかしさに抵抗するが、「ほら、桃香っ」と桃香先輩に俺を投げるようにして腕の中に押し付けた。 慌てた俺はその身体に抱きついた。桃香先輩の相良先輩の鍛えられた肉体とは違う細い身体が俺を抱えられるのかと心配にはなったが、顔色を変えることなく抱え直しただけだった。 肩から落ちた毛布を相良先輩は直して、「外、暗いから気をつけろよ。俺はここを片付けてから帰る」と教室のドアを閉めてしまった。 「落ちるなよ」 ボソッと話した声は俺の耳を擽った。

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