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裏切られ続ける想い
暗くなった特別教室棟の廊下を頭からすっぽりと毛布に覆われたまま落ちないように腕を回している。
桃香先輩は眉間に皺を寄せたまま俺を抱えて校舎を出た。
時間は分からないが、すでに外出できる時間を過ぎているのか、生徒の姿はない。相良先輩ほど逞しくはないけど、俺を抱えて歩けるほどの力は持っているようだと、抱きついた腕の力強さから感じ取った。
毛布の下は下着一枚しか着ていない。寒さに抱き着いているんだと思ってくれればいい。
抱きかかえられた恥ずかしさよりも、抱きかかえてくれている喜びの方が大きくて、その胸に顔をうずめる。鼻腔に微かに桃香先輩の香りが広がって、安堵のため息がこぼれる。
寮の入り口から入るのかと思っていたが、桃香先輩は俺が知らなかった裏口から中に入り、様子を伺いながら中に進んで、エレベーターに乗り込んだ。
さすがに俺を抱えるのは重いらしく、何度も抱えなおしたが、俺が「降りますよ」と言っても、強く抱え直すだけだった。
部屋に入ると部屋の明かりは付けられたままで、そのままバスルームに連れて行かれて脱衣所の壁に手を付くようにして立たされた。
右足は痛んだが、頭からかぶった毛布を肩にかけなおして前を掻き合せた。
シャワー室に繋がる扉を片手で開いて、「入れ」と俺の背中を押す。
「えっ……ちょっと……」
毛布を引き取られて背中を押された。痛む右足を庇うように中に入ると、『ザーッ』っと音がして熱いお湯がシャワーから噴出した。
「痛いっ……しみるっ……痛いっ」
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