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裏切られ続ける想い

 冷え切った身体にかかるお湯は熱くて、かすり傷があちこちにできていてそこに湯がかかるとしみて痛む。その熱いシャワーから逃げようと身体を捻ると足元に流れ出した液体が滑って危うく転倒しそうになった。 それを慌てて抱き支えたのは服を着たままの桃香先輩だ。 白い制服のワイシャツが濡れて透ける。ズボンもすっかり濡れてしまって、その艶のある黒い髪も濡れていた。 俺は抱き締められたまま息を呑んだ。 「じっとしろ」  掠れたその声に色気が感じられる。 シャワーコックを握った桃香先輩は俺の身体を流す。 壁に着いていた俺の両腕を自分の肩に回すように促して流すから必然的に正面から抱き合う形になる。 「ち、ちょっと、それは」  履いたままの下着を引き下ろされて慌てて抵抗するが、狭いシャワー室では逃げ場は無くて俺はされるがままになるしかなかった。痛む右足のせいで簡単に下着は取り払われて、水を含んで床にべチャッと落とされた。  湯を含んだ液体はさらにぬめりを帯びて、掴んでいないと簡単に転びそうで、抱き合うように回された桃香先輩の肩に身体を預けた。  それに抱き着いていた方が、身体を見られなくてよかった。 タオルで身体を洗われて、蹴られたところを擦られるたびに、「んっ」と痛みに息を詰めた。背中側を流すために更に密着させられて、桃香先輩の肩に顎を乗せて身体を預けた。 「……比嘉」 耳元で囁くようにそのハスキーな声が俺を煽った。 聞きたいと望んだその声が、俺の名を呼んでいる。

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