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裏切られ続ける想い

音がして脱衣所のドアが開いた。急に大きく開かれた驚いたが、桃香先輩がいてその後ろには梓先輩がのぞき込んでいた。 「出ておいで。手当てするから」 梓先輩は踵を返すと脱衣所から出て行った。 桃香先輩はすでに着替えていて、俺の腕を自分の肩に回すと抱え上げた。 「だ、大丈夫。歩ける。歩けますっ」 抱え上げられたけど、それは一瞬ですぐにソファーに下ろされた。 ソファーには梓先輩のほかに相良先輩と春、末長が座っていて、梓先輩の後ろには園田先輩が立っていた。それに会ったことのない生徒が2人。 こんな大勢の前でお姫様抱っことか……恥ずかしくて死ねる……。しかも、シャワー室で……声とか、大丈夫だっただろうか。動揺して赤くなりながら俯いた。 梓先輩は、「ほら、足出して」と右足を引いて俺の足元に跪いて救急箱を横に置いてにっこりと笑っている。 「捻ったのかな……痛む?」 「かなり」  足首を中心に触ったりひねったりしながら、触診した。 「折れてはいないみたいだけど、冷やした方がいいかもね。和臣、風呂長いよ」 笑いながら救急箱から湿布を取り出して足首に貼ると、剥がれないように包帯を巻いてくれた。 風呂が長いって言うのは、冷やすべき足を暖めすぎってことだろうけど、この人に言われると違う意味を含んでいそうで俯いてしまう。 それに、部屋にこんなにたくさん人がいるなんて知らなかったし……。知ってたらあんなことしなかったと……いや、俺がしたわけじゃなくて、桃香先輩が……。 なんであんなことしたのか理由は分からないけど……。 ソファーでは相良先輩を中心にして話合いをしていた。

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