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裏切られ続ける想い
かすり傷を消毒して、痣の酷いところには湿布を貼ってもらい、春に服を取ってきてもらって俺はようやく落ち着いた。
梓先輩は俺が着替えている間に桃香先輩の隣に座っていた。その桃香先輩は梓先輩の肩に顎を乗せるようにして喋っている。
梓先輩は苦笑いしながら回りに桃香先輩の話しを話していて、回りもそれを容認している。
俺はその梓先輩の横に座らせられていた。
「犯人はB寮の3年。捕まえてデジカメ内のデータも消去済みだ。比嘉にテストの白紙解答の提出を強要した理由だが……」
相良先輩はそこまで言うと、「梓ファン」と梓先輩を睨み付けた。
「え? 何で梓先輩のファンが俺を襲ったんですか?」
だって、テストで点数が上がればまた副寮長として寮に帰ってくるというのに。
「園田とは遊びっぽいけど、桃香とは本気っぽいからだそうだ」
「は?」
「別に僕は園田と遊んでるわけでも、和臣と本気でもないんだけどなぁ」
矛先を向けられた梓先輩はごまかす様に冗談めかした。
「お前がさっさと身を固めれば回りは惑わされなくて済むんだよ」
椅子の後ろに立つ園田先輩はそう言って梓先輩の頭を叩いた。
「話し戻すけど、B寮に梓に帰って来て欲しくはないけど、自分たちの成績は下げたくないってことで、比嘉を襲ったらしい。比嘉なら成績を落としても寮を変わることが無いからな。むしろ、比嘉が同室でいてくれないと困るってことだ」
俺が成績を落とすと梓先輩は帰ってこられない。桃香先輩に近づけないためには俺が同室で好都合ということらしい。
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