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裏切られ続ける想い
「僕は今度のテストでB寮が勝っても帰ってくる気は無いって和臣には話してあるんだけど」
「「「え?」」」
園田先輩と相良先輩、それと知らない生徒の1人が声を上げた。
「あれ? 和臣話してないの? 僕はB寮が平均点10点以上の成績で勝ってもここには戻らないよ。和臣もいい加減僕離れしないといけないしね」
そう言いながら肩に顎を乗せている桃香先輩の頭を撫でる。
それが甘やかしているということなんだよ。
「桃香。俺はそんな話全く聞いてないぞ。お前が梓に帰って来て欲しいって言うから……」
ボソボソと梓先輩の耳元で何か話す。
「『園田には渡したくない』って。和臣? どういう意味?」
梓先輩は振り返って桃香先輩を覗き込む。だけど、桃香先輩は梓先輩の耳元で話そうとするから2人は抱き合うようにして話している。
春が、「いつものことだから」と俺に耳打ちした。
こんな話し方していたら誰が見ても恋人同士がいちゃついている様にしか見えない。
「和臣。それは無いから。大丈夫」
一通り話して桃香先輩の頭を撫でると、「テストの成績に関わらず僕はB寮には帰ってこないから。和臣も納得したから」と言って笑った。
「それじゃあ、俺は襲われ損じゃないか」
呟くと桃香先輩は梓先輩越しに手を伸ばして俺の頭を撫でた。
その行為にカチンときて、「喋れよっ」と声を荒げた。
桃香先輩は手を離す。
梓先輩は眉間に皺を寄せて俺の方を見た。
「桃香先輩が喋れば問題ないんじゃないか。梓先輩が帰ってこなくても桃香先輩がちゃんと喋れば……」
2人が会話を交わすたびに胸が痛む。
俺には聞かせてくれない声だから。
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