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焦がれる自覚

副寮長に指名はされたけど、相良先輩は「その場にいたからだよ」なんて流し、これまで通り、『不在』のままになった。 顔も知らない2人の生徒はC寮の寮長、副寮長だった。 校内での暴力事件とあって各寮長が集められたのだ。 被害者は俺。暴行を起こした生徒は退寮。全寮制の学校での退寮は退学を意味するが、退学の処理は学校側が行う。俺が寮に帰っていないことで探していたところを他の生徒から連れて行かれたこと聞き、助けに来たということだった。GPSの付いた生徒手帳は窓から投げられて、正確な場所が分からなかった。 中間テストとテスト返却などであれから1週間経った。痛めた右足も徐々に良くなって、無理をしなければ痛みも無くなった。 テストは……まあ、いつもどおりの出来ではあった。各学年ごとに上位30番までが掲示板に張り出され、寮の平均点も発表された。 「駄目だったねぇ」 B寮はA寮に平均点6点差で勝ったのだ。 桃香先輩は相変わらず黙ったままで、俺のことも避けていて声をかけても返事も無ければ手を上げて聞いていると合図してくれることも無い。 少し近づいたと思った距離は、あっという間に遠くに離れてしまった。 毎朝行われる寮長会で顔を合わせるし、みんながいるからなのか、ネクタイも結んでくれる。でも、それ以外は同室だというのに会うことも無かった。 ふとした時に指先で触れてしまう唇にあの熱はを思い出す。 もし、あの時、梓先輩が来なかったらどうなっていただろうかとその先を考えてしまう。

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