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焦がれる自覚
「どうかな? 今から寮長会だから聞いとくね。響君、食事とかどうするの? 寮の食堂休みだよ」
4日間は長いが、寮生も少なくなる為、食堂は休みになる。大浴場も休みになるけど、部屋にはシャワー室があるから心配ない。
「ああ。大丈夫。コンビニあるし」
寮から十数分歩けばコンビニがあるのは知っている。カップ麺でも買っておけば、簡易キッチンもあるから食事の心配はない。
話している間に寮に到着した。春は明日からの寮の管理について話し合いがあるらしく、すぐに5階の講堂に向かって行った。
部屋に戻ると、春と同じ寮長会の桃香先輩もいなくて、制服のままベッドにうつ伏せにダイブして枕に顔を埋めた。
抱き締められた腕と肌を撫でる手。その感覚は俺を捕らえて離さない。
噛み付くような口付けも。
あの手にイかされたことも。
俺……嫌な気はしなかったんだよね。むしろ……あの声を聞けたことの方が嬉しくて……。
名前……呼んだし。
襲われた恐怖と寒さで感覚が麻痺していたのかと思ったけど……『触りたい』って春に言って違うなんて言ったけど……。
触りたいと……。触られたいと、望んでしまった。
みんなの前で話す時の声は父親に似せた声なのだ。
俺はちゃんと、桃香先輩の『声』のほうが好きだと言ったはずだ。
声だけじゃない……と思う。
自覚して好きだと思った。
喋らないし仲良くも無いけど、惹かれていると自覚した。
梓先輩と一緒にいる時に感じる痛みは嫉妬だ。
俺、桃香先輩が好きだ。
寝返りを打って天井を見上げた。
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