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焦がれる自覚

学校の外じゃ桃香先輩は普通に話すと言ってたな。一緒に……買い物とか行けたらその声を聞けるだろうか……。 『比嘉』 掠れた声はまだ耳に残っている。噛まれた耳の感覚も。 耳に手を当ててため息を付いた。 キスしたし、俺に触ったし、全く眼中に無いとか男同士に嫌悪があるとは思えない。 むしろ期待してしまう。 梓先輩がこれまで同室でそういう相手だったのかもしれないから、俺はその身代わりで……。 でも、話もしてくれないから身代わりにもなれてない気がする。 明日から4日間の休み。 ため息をついて起き上がると私服に着替えた。 梓先輩に、聞いてみよう。どうやって、桃香先輩と過ごしたらいいか、謝るにしてもどうしてしゃべらないのかを知りたい。 A寮も同じように明日からの休みに向けての寮長会が行われているかもだけど、4日も休みならそのうちの一日だけでも空けて桃香先輩を連れだしてもらえるかもしれない。 夕食の時間まではまだ少しある。行ってみよう。 俺はA寮に向かった。 同じ敷地内にあるのに、寮同士は校舎を囲むようにできていて遠い。特にA寮とB寮は離れていた。校舎を回るようにして歩き、一番近いC寮を通り過ぎた先にA寮がある。 他の寮には原則入室禁止だ。寮長会のメンバーのみが許可を得て入ることができる。 寮の造りは同じだ。B寮と同じように入口には受付がある。 「すいません。B寮の比嘉響ですけど、副寮長の梓……、桃香梓先輩をお願いします」  受付に呼びかけると、「ああ、比嘉君」と顔を出したのは俺が初めてここに来た時に寮まで案内してくれた柴田だった。 「え? 寮監ですか?」

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