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焦がれる自覚

「ああ。休みの間は空いている教師が寮監で管理するんだよ。今回は俺がA寮に宿直だ。梓君な。すぐ呼んでやるから待ってろ」  柴田は受付に置いてある内線電話を手に取るとすぐに呼び出しの電話を入れてくれた。寮の入り口には来客用のベンチが置いてある。学校にやって来る部外者や保護者は寮には入れないから、これは生徒同士用の物だろう。  それに座って待っていると、「あ、響ちゃん」と言って梓先輩がやってきて、パッと立ち上がって会釈をした。その後ろには園田先輩がいて、「じゃあな」と言って手を降って俺にも手を振って食堂の方に行ってしまった。 「園田先輩はいいんですか?」 「ああ、大丈夫。寮長会だから」 「梓先輩は行かなくていいんですか?」  忙しい時間だったんじゃないかと慌てた。 「僕はいいんだよ。園田がやってくれるから」  少し寂しそうに聞こえるのはこの間と同じ感情だろうか。『誰のものにもならない』という。 「和臣と違って、ここは園田が独裁してるからね。園田に任せておけば大丈夫なんだよ。それに、僕なんかより優秀なメンバーが揃っているから。もう足は大丈夫?」 「はい。すっかり。ご心配おかけしました」 「うん。心配した。でも、良くなったのなら安心した。それで、僕になんの用事かな?」  座っていたベンチを勧められてもう一度座りなおすと、すぐ隣に梓先輩が座った。 「桃香先輩って、なんでしゃべらないんですか? この間、怒ってからまた口を聞いてくれなくなっちゃって……俺、どうも嫌われたみたいなんですよ」  喋ることを強要したから怒ったんだろうけど、それを解決する術が分からない。  根本を解決することができたら、桃香先輩も救われるんじゃないかって、楽になるんじゃないかって、俺は思う。

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