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焦がれる自覚

 梓先輩は、「僕もって言われたんだけどね」と笑った。 「寮が変わって、いい機会だよ。いつまでも僕が側にいて和臣をこれ以上甘やかすわけにもいかないからね。そろそろ僕離れしてくれないと、僕は恋もできないよ」  にこやかに言って食堂の方を見つめる。梓先輩には誰か、想い人がいる。それは、桃香先輩じゃない。 「少し、安心しました」 「やっぱり、響ちゃんも僕と和臣の仲を疑ってたんだ」 「仲良すぎですよ」 「和臣は元々甘えたがりだからね」 「どうしたらいいですか?」  何か手立ては無いのだろうか。桃香先輩を救える手だてが。 「何も。響君は和臣の好きでいてくれればいいよ」  ドキッとして顔を上げる。 「こ、こ、声です」  吃ってしまったことで動揺は隠せなくて、耳が熱くなった。 「僕もそれくらい素直だったら、良かったんだけどね」  すっと立ち上がった。 「そろそろ帰りな。和臣が心配しているよ」  座ったままの俺の頭を撫でた。   部屋に帰ると桃香先輩はまだ帰って来てなくて、食堂に行くついでに制服を洗濯場のクリーニング申し込み口に出した。もうすぐ食堂は閉まる時間で生徒がまばらだった。夕飯を済ませると食堂の入口にある自動販売機で缶コーヒーを買って部屋に戻った。

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