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焦がれる自覚

リビングに先輩の姿は無くて、まだ寮長会に行ったままなのだろうソファーに座って缶コーヒーのプルを開けた。 会議、長いな。 桃香先輩は休みをどうするんだろう。 寮に残るなら、その間に少しでも距離を縮めたい。しゃべってくれるまではいかなくても、前のように相槌だけでも打ってくれればいいのに。 2人きり……。 期待してしまう。 嫌われていなければいいけど。 キス、してしまったし。 『カチャン』  扉が開く音に驚いて唇から手を放した。 書類を胸に抱えた桃香先輩が帰ってきた。 いつもはすぐに部屋に入る俺がソファーに座っていたので一瞬驚いたようにも見えた。 桃香先輩は手に持っていた書類の束を俺が座っているソファーの向かいの席に置くと自室に入って行った。自室の机よりも広いテーブルは書類を広げて作業をするのに便利で、桃香先輩はいつもこのテーブルで書類をまとめている。それに、寮長会がここで行われることが多いから一々部屋に持って行くより早い。 緊張した。ほっと息を吐いてから缶コーヒーを口に運んだ。 向かいのソファーには厚さが5センチほどもあるファイルが2冊と数冊のノート、それに書類の束が重ねられていた。 今から書類を片付けるのだろうか。 寮長って忙しいんだな。 部屋から出てきた桃香先輩はブルージーンズに長Tだった。普段よりもかなりラフな格好で出てくるとキッチンに行く。 俺は視野の隅でそれを観察していた。 部屋に戻ろかとも思ったけど、避けているように取られるのも余計に険悪になりそうで、じっとソファーに座っていた。

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