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『待ち時間』
「言っちゃダメだったの? でも、外出届出てなかったから、先輩は知ってたよ」
連休中の予定は先週には提出していた。それを確認するのは先生と寮長会のメンバーだ。もちろん寮長である桃香先輩がそれを知らないはずはない。
「そっか。そうだよな。ごめん。なんでもない。出かけてくる」
そう言って相良先輩の部屋の前から離れようとすると、ドアが開いた。
「あ、先輩。ごめんなさい。遅くなって……」
でも、出てきたのは相良先輩ではなくて、末長だった。
春はビックリして、「なんで末長が出てくるの?」と聞いた。
「明日からの旅行の確認に来たんだけど……」
「え? 旅行? さ、相良先輩と?」
春は末長に聞いていながら慌てた様子で中に入って行ってしまった。
「旅行に行くんだ」
「急に相良先輩に誘われて行くことになったんだよね」
眼鏡を上げて、「もうちょっと話して来る」と今出てきたばかりでの中から春の声が聞こえる部屋に入って行った。
ということは、この4階の住人は俺と桃香先輩だけってことになる。
寮の治安を維持する寮長会のメンバーが全員寮を出て行くわけにはいかないから、桃香先輩は出かけられない。
春がどうするのか具体的には聞いてないけど、今の様子だと旅行に行くのだろう。
廊下に立っていると、肩を叩かれた。
ビックリして振り返ると桃香先輩が立っていた。
「早いですね」
俺はそう返して、「コンビニに行ってきます」とエレベーターへと向かった。その後を桃香先輩も付いて来てエレベーターの降下ボタンを押した。
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