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『待ち時間』
俺は寮生のいなくなったコンビニに入って、オレンジ色の籠を手に弁当のコーナーに向かった。
日持ちしそうなおにぎりやカップ麺、パンを籠に入れてジュースのペットボトルを選びに行ったら、『ドサ』っという音共に籠が重くなった。
「甘いもんばっかじゃダメですよ」
籠の中にはプリンやゼリー、シュークリームなどの生菓子が入れられていて、その手にはチョコレート菓子が握られていた。
「今日の晩ご飯は?」
確か食べていなかったはずだけど、どう見てもこれはご飯にはならなさそうだ。
「相良先輩にまた怒られますよ。梓先輩に言いつけるって」
機嫌悪そうに眉間に皺を寄せると、すぐ横にあった菓子パンを籠に入れた。
「何で俺の籠に入れるんですか。自分で取ってきてくださいよ」
俺が中に入れられた菓子パン類を取り出そうとしていると、ポケットから携帯を取り出してメールを打ち出した。
「ちょっと、聞いてますか?」
ちらりと俺の方を見てから籠ごと取り上げて食品とは別のレーンへと向かって行った。
「ちょっと、待って」
慌てて追いかける。
「俺のは出しますから」
財布を弄っていると先輩の携帯が鳴り出して、ディスプレイを確認してから、俺に渡してきた。
「え? 誰?」
渡されて慌てて耳に当てた。
『それって同意なの?』
「え? 梓先輩?」
携帯から聞こえたのはのんびりした口調の梓先輩の声だった。
『あれ? 響ちゃん? 一臣は?』
携帯を耳に当てたまま桃香先輩を見ると棚を物色している。
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