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『声を聞かせて』

桃香先輩は顔を上げると同時に俺をグッと引っ張り、自分の部屋のドアを開けて中に入れた。  ドタンッと音がして激しくドアを閉める。  ドアを背にした先輩にまた繰り返される口付け。  今度は背にするものが無くて、そのまま後ろに倒れ込んだ。  背中に感じる衝撃はベッドが吸収して、2人分の重さを受け止めたベッドが軋む音を立てた。  両足はベッドの下で、両手はベッドに広げている。  その手を片方掴まれて、自分の首に回すように促される。口付けを繰り返しながら、そうされて縋るものを求めて、両手をその首に絡めた。  荒い息が自分の中で木霊して、気分も高揚するのを感じる。  時より強く吸われる舌に、甘い声が混じった。  俺が両手を回したのを確認して、先輩は背中とベッドの間に手を入れると、そのまま俺を上へと引き上げた。  枕に頭を降ろされて、じっと上から見下ろされた。  暗いままの室内なのに、お互いの顔は見えるほどの距離。  熱く荒い息。見上げた桃香先輩の唇は赤く色づいている。  投げ出したままの両足の間を桃香先輩の膝が割って入ってくる。羞恥に体を引くが、弾みでお互いのものが擦れ合った。  「………っ」  全身を震わせるほどの衝撃がそこから広がって、とっさに逃げを打つけど、上からのしかかって来る桃香先輩からは逃げられなくて余計に擦り合う。  キスだけでこんなにも昂ぶっている自分が恥ずかしくて、とっさに顔を背けるけど、ジワリと感じる疼きはとめる事ができない。 

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