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『声を聞かせて』
入口を突くように刺激されてその声に煽られる。
「いいって……言った」
抱いていいよとさっき伝えたはずだ。
なのにまた、俺に答えを求める。
「俺に、やられたい?」
低くかすれた熱を含んだ声。
熱い塊に擦られて、腰が揺れた。
「身体は素直なんだから、言ってみ?」
意地悪く囁くように、ゆっくりと喋る。
その声に身体が反応することをもう知られている。
「響」
「欲しい」
呼ばれた途端に答えた。
口端を上げるように意地悪く笑うと、足元の方を探って小箱を取り出し、中から取り出したゴムを着けた。その行動に羞恥して、待たされている間視線を彷徨わせた。
腰を両手で掴まれて、グッと押し入られた。悲鳴ともつかない声を上げて、身体を仰け反らせた。
痛みと言うのは甘くて、焼けた鉄でも押し付けられているかのような痛みがそこから広がって、身体は逃げを打つ。
「……響」
かすれた声に呼ばれて、そっちに助けを求める。
「んあっ…んっ」
快感なんて無くて、痛みに身体は強張るばかり。ゆっくりと入って来ながらあやす様に、緊張を解すように両手が身体を撫でる。
「……と、がせん、ぱいっ」
話したい事が伝わったのか、やっと搾り出した声に、「何?」と聞き返されて、身体が跳ねる。
「もっと……声。……聞かせて」
呻くようにそう伝えると、「響」と愛しむように優しく名前を呼ばれた。
「もっと」
「響」
求めるたびに声を聞かせてくれる。
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