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『変わらない情景』

「ん? 陣中見舞いってやつ?」  陣中……見舞い?  「からかいに……来たんですか?」  「それもあるけど、休み明けの全校集会の打ち合わせ。相良でもいいんだけど、今いないみたいだから」  さらっと、認めたよね。  桃香先輩は相変わらず梓先輩の肩に後ろから顎を乗せている。  そのまま、またボソボソと何か話す。  「それは響ちゃんが認めないとダメだよ」  ボソボソ。  「いや、それはそうだけど。響ちゃんにちゃんと聞いてから決めないと」  ボソボソ。  「B寮のことだから、相良や春君にも相談した方がいいじゃないの? 僕はA寮だから関係ないし」  梓先輩は話しながらベッドの端に座った。その横に桃香先輩は上って、片足を梓先輩の背中に回してまた肩に顎を乗せた。  座った梓先輩は気にする風でも無く、手に持っていたファイルを開いて、桃香先輩に見えるようにして指差して何か話し出した。  完全に蚊帳の外なのだけど俺。完全に放置されてるし。  2人が従兄弟同士で、ずっと同室だったし、仲がいいのは理解できるけど……昨日の今日で、この態度はどうかと思うんだよね。  普通はさ……俺のこと心配してくれたり、甘い言葉の一つでも掛けてくれるんじゃないの?  起きて早々に違う男と目の前でイチャイチャするのって……どうなんだよ。  イライラしてきてその怒りに任せて、桃香先輩のその足を蹴った。  「………」  痛くは無かったと思うけど、桃香先輩は眉間に皺を寄せて俺を睨み付けた。 

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