99 / 121
『変わらない情景』
「梓が戻ったらお前はここを出るんだからな」
「……んっ……それは」
ここを出されたら俺は別の部屋に移される。
「俺は、ここにいて欲しいけど」
耳に響く甘く掠れた声が俺を揺さぶる。甘く蕩けさせるその声に弱い事は昨日知られてしまった。それを桃香先輩が利用しているのは分かっているけど、さらに俺に甘えろと促している。
「……桃香、先輩がそう、言うなら……」
耳を甘噛みされて慄いて身体が震えた。指先から震える。
「梓。許可もらったぞ」
振り返ってそう言って、俺から離れると梓先輩の方へ行って、先ほど捲っていた書類を手に取った。
……。俺、本当に好かれてる?
ともだちにシェアしよう!