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『変わらない情景』

「梓が戻ったらお前はここを出るんだからな」  「……んっ……それは」  ここを出されたら俺は別の部屋に移される。  「俺は、ここにいて欲しいけど」  耳に響く甘く掠れた声が俺を揺さぶる。甘く蕩けさせるその声に弱い事は昨日知られてしまった。それを桃香先輩が利用しているのは分かっているけど、さらに俺に甘えろと促している。  「……桃香、先輩がそう、言うなら……」  耳を甘噛みされて慄いて身体が震えた。指先から震える。  「梓。許可もらったぞ」  振り返ってそう言って、俺から離れると梓先輩の方へ行って、先ほど捲っていた書類を手に取った。  ……。俺、本当に好かれてる?       

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