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『恋の手ほどき』

桃香先輩は俺の腕を強く掴んだまま眉間に皺を寄せて、呻くような声で、「お前が言うな」と俺に言った。  そして横を向いた。  その耳が赤いのは……照れているからだろうか。  「一臣。ほら、ちゃんと言ってやりなよ」  梓先輩が笑いを含んだ声でそう言うと、「お前は黙ってろ」と言い返した。  言い返して、俺と視線を合わせると、「別に……逃げたわけじゃない」と小さく呟いてから、腕を引き寄せた。  引き寄せられるがまま俺は桃香先輩に抱き付かれて、顎を肩に乗せるように耳に顔を寄せられた。  「ちゃんと……好きだから」  掠れた声がそう告げた。  熱い息が耳を擽る。  抱き締めた腕が支える。  「抱いた側から違うやつとイチャイチャされたら不安になるんだよ。一臣。もっと、響ちゃん想ってやりなよ」  その言葉に更にギュッと抱きつかれる。  「悪かった。ごめん」  その声に俺は力が抜ける。抱き支えられているから余計に。  「……うん」  返事をして頷いてその肩に額を付けた。  「じゃあ、僕、帰るね。邪魔みたいだし」  「ちょっと待て」  桃香先輩は慌てて梓先輩の腕を掴んで、「教えてくれ」と言った。  何を? 何か今から勉強でも始めるの?  「まあ……僕は構わないけど、響ちゃんは?」  梓先輩はその妖艶な雰囲気を更に濃くして微笑むと俺に、「こればっかりは響ちゃんに協力してもらわないとうまく行かないと思うよ」と言った。  「な、何……です?」  「気持が通じても相性が悪かったら最悪だと思うんだよね。プラトニックなんて気持ちよく無いし。僕は、セックスもお互いを愛し合う手段だと思うんだけど。響ちゃんはどう思う?」 

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