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『恋の手ほどき』
「お、俺は……」
気持が通じれば、抱合いたいとも思う。
だから、最初の日は抱き合ったのだ。お互いがお互いを欲したから。
「響をもっと欲しい」
「一臣は分かってるから。今は響ちゃんに聞いてるのっ」
うん。俺を襲わないように梓先輩を利用したって程だから、その、俺を……抱きたいんだって事は分かっている。
だけど、だけどさ……それは何度かするうちに掴んでいくコツみたいなのがあるんじゃないのかな?
「お、俺は……別に、急を要してないから……」
「急は要さなくてもいいけど、ま、付き合ってあげるよ? 一臣準備して」
「ああ」
桃香先輩は頷くと俺を抱えあげた。
「うわっ、ちょっとっ。待って。俺返事してないっ」
「まあ、一臣も煮詰まっちゃってるし」
抱えられた俺を見上げながら梓先輩は付いてくる。
「大丈夫。大丈夫」
「だ、大丈夫って」
連れて行かれたのは桃香先輩の部屋。ベッドの上に俺を降ろすとそのまま両肩を押えて組み敷いた。
「あ、梓先輩が、いますよ」
「ああ。あいつに教えてもらう」
「え……いや、俺は教えてもらわなくても……その、別にしなくても……」
「俺は、お前が欲しい」
グッと色気の増した声にゾクゾクと背中が震える。
「俺の声だけじゃなくて、俺を欲しがってほしい」
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