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『恋の手ほどき』
梓先輩は言うけど、俺は首を横に振る。
痛みに慄いているんじゃない。この行為自体が嫌なのだ。
2人がかりで押さえつけられて……。
桃香先輩だから許した行為を桃香先輩は意図も簡単に梓先輩に許してしまう。
俺が痛がったからとか、自分に自信がないからとか。そんな理由で……2人だけの行為に……他人を入れて欲しく無い。
俺だけであるように、桃香先輩だけのものでありたいのに……。
「やだ……嫌だ。もう……やめて」
ぐっと唇を噛み締めて、その肩に顔を擦り付けた。
「響」
その声に身体が震えた。
ポンポンと優しく背中が叩かれて、梓先輩が俺の身体を離した。
「ちゃんと好きだし、一臣で感じてるのにね」
梓先輩は笑った。
「自分の声に嫉妬なんかするなんて、一臣もまだまだだよね」
もう一度俺をギュッと強く抱き締めると、「先に謝ったでしょ」と小さく呟いた。
『ごめんね』って……。
「ご馳走様。帰るから」
するりとベッドから梓先輩は降りて、パタンと音を立てて部屋から出て行った。
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