114 / 121

『わがままな情緒』

  途端に仰向けに押さえつけられて、そのまま上からギュッと抱き締められた。  「やばい」  耳元で一言。  何?  ギュウギュウと強く抱き締められる。重みも加わるから徐々に苦しくなってくる。  「ちょ、っちょっと、先輩。苦しい」  その肩を叩くと、「ああ」と言って緩めた。  「お前……最悪」  両腕を俺の顔の両側に付いて見下ろしながらそう言った。  「最悪って……何?」  梓先輩が帰ったから?  俺が嫌がったから?  そんなに3人……梓先輩がいいとか……。  片方の手が俺の頬を撫でる。  「俺も、最低だけど」  言いながらチュッと音を立てて口付けられた。  「むちゃくちゃやりたい」  「え……」  「押さえ……利かなくてもいい?」  擦れた声は普段よりも低い。その声がゾクゾクと俺を溶かす。  「あの……えっと……」  「寂しいなんて言えないほど……かまっていいってことだろ?」  「……それは……」  「響」  名前を呼びながら再び口付けられる。唇を離さずに何度も音を立てて口付けて、頬に添えていた手はいつの間にか俺の太ももを撫でている。  「ストッパーはいないからな」  「か、かまってとか……こんなことじゃなくて……俺は別に……」  「何?」 

ともだちにシェアしよう!