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『わがままな情緒』

この間感じた違和感も、痛みも全てがそこから与えられる快感にすり替わって、擦られるたびに甘い声が上がり、のたうつ。  肩に回していた手は落ちて、枕の端を握り締める。  中を擦る指が抜かれた。ふっと力が抜けるも、自分の意思とは関係無しに引きつるのを感じた。羞恥に握り締めていた枕を引き寄せるけど、隠れるには足りなくて、顔を横に向けた。  カチャカチャと金属音がして、ジーっとファスナーの降りる音。その後に衣擦れの音がする。  「………」  喋らないことが得意な桃香先輩。俺が喋るなって言ったから喋らないけど、それはそれでとても不安になる。  膝裏を押えられて足が開かれるのを感じて、身じろぐけど横を向いた頬にキスをされたから俺は閉じていた目を開いた。  近すぎるその距離に驚くけど……するりと腕を巻きつけて、引き寄せた。  「……せんぱ………」  縋りつくように引き寄せて、その頭を掻き抱くと、「ん?」と首を傾げた。  これほどの近い距離にドキドキして、甘い快感にドキドキして、胸が急に熱くなって、どうしようもないじれったさに縋りついた。  「……んっんんっ……あ」  熱を押し付けられて、身じろぐ。  ズルリと熱い物が窪みの入口を擦って通り過ぎる。何度もそれを繰り返されて、安堵と焦燥感に苛まれて、どうしていいのか分からずに、いつの間にか掴んでいたその肩に爪を立てた。  一度は受け入れたソレ。声だけじゃない……本当は声だけじゃなくて、わずかな快感も与えていた。  そのわずかな快感を身体は求めている。  『一臣で感じてるのにね』。梓先輩はそれを知っている。  だから、だから協力したし、手を貸した。  頑なな俺と先輩の想いを繋げる為に。 

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